院長の独り言

2024-09-20 16:34:00

吸収のしくみ

消化した栄養素はどうやって吸収されるかを説明します。吸収とは、小腸の粘膜上にある栄養素が細胞内に取り込まれて毛細血管に流れていくことを意味します。

 

消化液などによって消化された栄養素は、小腸内の細胞に取り込まれるにはまだ大きすぎます。もっと分子が小さくないと小腸の細胞には入れません。しかし、これ以上栄養素を小さくする消化液は小腸液にはほとんど含まれていないことが最近わかりました。ではどこで栄養素をもっと小さくするのでしょう。

 

これは、小腸の粘膜の膜の隙間にある消化酵素によって最終的に分解されより小さい分子になって分子レベルの大きさで小腸粘膜を通過し細胞内に入ることがわかりました。これを膜消化といいます。これによって、消化と吸収を厳密に区別するのが難しくなったわけです。

 

膜消化によって、糖質は、ぶどう糖・果糖・ガラクトースに分解され、蛋白質はアミノ酸に分解され毛細血管に入り、肝臓へと運ばれます。これらの吸収は、十二指腸、空腸および回腸の上部で行われています。

 


2024-05-03 12:45:00

消化のしくみ

心地よい風吹く皐月晴れです。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

今日は消化についてのお話です。

食物中の3大栄養素は、糖質、蛋白質、脂肪です。これらはどのように体の中で消化されているのでしょう。

消化とは栄養素を体の中に取り込むために食物をある程度まで小さくする働きのことです。消化作用には、歯で噛んだりする機械的消化、消化酵素によって分解する化学的消化、消化しきれずに大腸まできた食物を腐敗・発酵させる生物学的消化の3つがあります。

 ごはんやパンなどの糖質は、唾液の中のプチアリンという酵素によって、でんぷんがデキストリンや麦芽糖に分解された後、小腸の中で膵臓から分泌されるアミロプシンという酵素で本格的に消化されてしょ糖や乳糖になります。そこで小腸粘膜から吸収され毛細血管に入ります。

 肉や魚などの蛋白質は、胃液の中のペプシンによって分解されて分子の小さいペプトンとなり、小腸内で膵臓から分泌されたトリプシンやキモトリプシンによってより小さいポリペプチド、オリゴペプチドになり、小腸粘膜から吸収されます。

 脂肪は、小腸に至るまでほとんど消化を受けませんが、膵臓から分泌されてステアプシンによって、グリセロールと脂肪酸に分解され、小腸粘膜からリンパ管に入り、全身を回ります。

 3大栄養素が小腸で消化しきれなかった場合は、大腸において腸内細菌の働きで糖質は発酵、蛋白質や脂肪は腐敗して排便に適した形まで変化した後、排出されます。大便特有のガスと臭いはこうして発生するのです。




2024-02-16 14:21:00

鉄の不足と貧血の関係

貧血の中でも一番多い、鉄欠乏性貧血について少し詳しく説明しましょう。

通常は、特別な偏食がない限り、鉄分の摂取量が極端に足りなくなることは多くはありません。どういった場合に体の中の鉄分が不足してしまうのでしょうか?

まず一つは、胃潰瘍や大腸癌などの病気があって消化管からの出血がじわじわ続いていると、出血した分の赤血球を補うために骨髄での造血作用が進みますが、その時に原料である鉄が不足してきて、鉄欠乏性の貧血になります。

消化管からの出血が一度にドンと起こるとショックになったり血便がでたりして早く気づくのですが、じわじわ出血している場合には、貧血として症状に現れます。

もう一つは、女性の場合に多くみられるのは、子宮筋腫などの婦人科疾患がある場合です。子宮筋腫では、生理の量が多かったりして、定期的に失われる血液が多くなりがちで、鉄欠乏になりやすいといわれています。子宮筋腫がなくても、生理の量が極端に多かったり、長く生理が続いたりする場合も鉄欠乏の状態が起こっていることがあります。

鉄欠乏性貧血のある場合は、こういった原因が考えられるので、検便や胃カメラ・大腸検査、エコー検査などが行われることがあります。どうぞご相談ください。

2024-01-15 15:21:00

貧血


よく脳貧血とか言いますよね。でもこれは正式には貧血ではありません。貧血とは、血液の中の赤血球が少なくなる状態のことなんです。貧血にはいくつかの種類があります。この種類によって治療法が違います。

赤血球は、全身に酸素を送り届ける働きがありますから、これが不足すると、疲れやすくなったり、動悸・息切れがおこったり、これが長く続けば心不全になったりします。

一番多いのが鉄欠乏による貧血です。赤血球を作るための原料となる鉄が不足しておこる貧血です。この場合は、原料となる鉄を補うことで貧血は改善できます。それから、ビタミン不足による貧血があります。ビタミンB12や葉酸といったビタミンが何らかの原因で不足して、赤血球の合成ができなくなるために貧血が起こります。

その他に、骨髄がまともな赤血球を作れなくなる白血病や再生不良性貧血、赤血球が作られたあとにすぐ壊れてしまう溶血性貧血、腎臓の働きが弱って赤血球を作り出すホルモン(エリスロポエチン)が足りなくなる腎性貧血などがあります。

2023-12-16 15:53:00

薬と食品の相互関係

今日は季節外れの暖かさで、びっくりです。

前回から引き続きお薬の服用についてお話します。

薬を飲むとき、食べ物や飲み物が、その薬の効果に影響を与えるものがあります。どういったことに注意をしたら良いのでしょうか?

薬の効果が弱められてしまう場合としては次のような場合があります。ワーファリンという血液をサラサラにする薬がありますが、ビタミンKを含む、納豆やブロッコリーなどを食べるとワーファリンの効果が弱められます。

気管支拡張剤のテオフィリンは、たばこを吸っていると効果が減ってしまいます。

一方、薬の効果が強く出てしまう場合もあります。ある種の降圧剤では、グレープフルーツジュースと一緒に内服すると、効き目が強く出過ぎてしまいます。

アルコールは、薬の吸収を促進するので注意が必要です。気管支拡張剤のテオフィリンは、コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインと構造が似ているので、コーヒーなどを飲み過ぎると動悸などの症状が強く出ることがあります。

薬局で薬をもらうときに、薬剤師に服用時の注意をよくきいて、安全に薬を使うように心がけましょう。

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