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目黒区自由が丘の内科
東京都目黒区自由が丘3-10-8
東急東横線・大井町線
自由が丘駅より徒歩5分
診療内容
内科、消化器科、循環器科、呼吸器科、内分泌代謝科、アレルギー科、肛門科、神経内科、泌尿器科
胃カメラ 経鼻カメラ(ハイビジョン)、大腸カメラ(ハイビジョン)、超音波(デジタル)、レントゲン(デジタル)、大腸ポリープ切除術
厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室「平成17年国民健康・栄養調査結果の概要」 によると、40~74歳男性の25.5%(4人に1人)はメタボリックシンドロームが強く疑われることがわかります。
ウエスト周囲径を必須項目とし、脂質異常症・高血圧・高血糖のリスクをみる3項目のうち2項目以上に該当する場合、「メタボリックシンドロームが強く疑われる」と判定しています。
内臓の周りに脂肪が蓄積する内臓脂肪型肥満に加え、糖代謝異常・脂質代謝異常・高血圧のいずれか2つ以上を併せ持った状態をメタボリックシンドロームといいます。
動脈硬化は、心臓から身体の各組織に血液を運ぶ動脈が硬く・もろくなった状態を指します。血管の内側にコレステロールが付着して狭くなるので、血液が流れにくくなったり、血管が詰まりやすくなります。生活習慣病が併発すると、動脈硬化になりやすいので、血管が詰まって起こる病気である心筋梗塞や脳卒中の危険性が高くなります。
「メタボリックシンドロームの疾病概念の確立と診断基準の設定」記者会見用資料より作成
海外では、世界保健機関(WHO)など複数の団体からメタボリックシンドロームの診断基準が発表されていますが、人種・体格などの違いがあるため、欧米の基準をそのまま日本人にあてはめることはできません。日本人に適した診断基準として、2005年4月に日本内科学会を中心とした8学会により構成されたメタボリックシンドローム診断基準検討委員会からメタボリックシンドロームの診断基準が発表されました。
必須項目である内臓脂肪の蓄積を調べるために、ウエスト周囲径を測定します。その他、脂質異常症、高血圧、高血糖のリスクをみる3項目のうち、2項目以上に該当するとメタボリックシンドロームと診断されます。
各項目の基準値には、すでに高血圧、糖尿病と診断された方だけでなく、血圧が少し高めの高血圧予備軍や血糖値が少し高めの糖尿病予備軍といった、まだ、病気と診断されていない段階の方も含まれます。
生活習慣病と呼ばれる高血圧・脂質異常症・糖尿病の進行に、内臓脂肪の蓄積が大きくかかわることがわかってきました。
つまり、内臓脂肪が蓄積すると、身体にとって良いホルモンの減少と不都合なホルモンの増加により生活習慣病を併発しやすくなってしまうのです。
たとえ血圧が少し高めの高血圧予備軍や血糖値が少し高めの糖尿病予備軍といった、病気と診断されていない段階でも、併発すると動脈硬化の危険性が急激に高まるのです。
いま、日本では成人の約2.6人にひとりが、高血圧といわれています。
血圧とは、心臓から送りだされた血液が血管に与える圧力のことをいいます。血圧には心臓が縮んで血管に圧力がかかるときの収縮期血圧(最高血圧)、心臓が拡張して圧力が低くなるときの拡張期血圧(最低血圧)の2種類があります。どちらかでも基準値を超えると、「高血圧」と診断されます。
血圧は、常に一定ではありません。1日のなかでも時間帯によって様々に変化します。さらに運動やストレス、気温などによって、血圧は上がりやすくなります。高血圧の方は日常生活においても、血圧の変動に気を配りたいもの。特に起床前後は要注意。血圧が急上昇するため、脳卒中や心筋梗塞が発生しやすくなります。
高血圧のタイプは、2種類。このうち、日本人の多くが「本態性高血圧」です。生まれつき高血圧になりやすい人が、肥満、アルコール、運動不足などの悪い生活習慣を続けることによって心臓や血管に負担をかけ、高血圧になってしまうタイプです。高血圧を防ぐには、まず、日頃の生活習慣の見直しが大切です。
ナトリウムを多く摂ると血液量が増え、血圧は上昇。またナトリウムは血管の収縮性を高め血管の抵抗を大きくし、血圧を上昇させます。高血圧と診断された方は、1日の塩分相当量は6g未満に制限するように努めましょう。アルコールは医師の許可がある場合に限り、1日に日本酒なら1合弱、ビールなら中瓶1本、焼酎なら半合が適量です。
(本文解説・監修:愛媛大学 病態情報内科学 教授 檜垣 實男先生)
高血圧の本当の恐ろしさは、「合併症」です。
合併症とは、その病気が源になって起こる、別の病気や症状。高血圧は、初期には表だって症状が現れないので合併症になりやすい病気です。まず血圧が高くなると、血管に常に強い圧力がかかり、血管の壁が厚く硬くなる動脈硬化になります。そして動脈硬化によって狭くもろくなった血管にさらに圧力がかかると、脳や心臓、腎臓の血流が滞って詰まったり、血管が破れて出血したりします。自覚症状がないといって放っておけば、脳出血や心筋梗塞など、生命にかかわる様々な合併症を引き起こします。
普段から自分の血圧を知っておくことは、血圧のコントロールや、医師の診断において大変役に立ちます。家庭で簡単に計測できる血圧計を利用して、習慣づけるようにしましょう。
(本文解説・監修:愛媛大学 病態情報内科学 教授 檜垣 實男先生)
気づきにくい病気である高血圧は、予防できる病気でもあります。
日本高血圧学会では、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上を高血圧とし、「I度」「II度」「III度」の3段階に分けています。また高血圧は他の病気を合併することから、さらにそれぞれの段階と血圧以外の危険因子の有無によりリスク分けもされています。家庭での測定はもちろん、職場や市町村の健康診断を定期的に受け、予防の意識を普段から持つようにしましょう。
高血圧を発症させやすくするのが肥満。肥満はどこに脂肪が多くついているかによって2つのタイプに分けられますが、要注意なのは「内臓脂肪型肥満」。内臓に過剰な脂肪がついていると血圧のコントロールが難しく、高血圧だけでなく、糖尿病、脂質異常症など他の生活習慣病も合併させてしまう恐れがあります。最近の研究では、内臓脂肪型肥満者は高血圧、糖尿病、脂質異常症のひとつひとつの症状が軽度でもあわせて持つと、動脈硬化の進行が加速されるといわれています。近年、このような状態は“メタボリックシンドローム”と呼ばれています。肥満を避けることこそ、健康づくりの第一歩と考えましょう。
(本文解説・監修:愛媛大学 病態情報内科学 教授 檜垣 實男先生)
高血圧を予防するにはやはり生活習慣を見直さなくてはいけません。高血圧を引き起こす危険因子と手を切ることで、軽症の高血圧が解消することもあります。
高血圧の治療は、緊急に血圧を下げる必要がある人以外は、脂質異常症をはじめとする生活習慣病がそうであるように、まず食事療法と運動療法から始まります。食事療法のポイントとなるのは、塩分制限、カロリー制限、アルコール制限などです。これらは高血圧の重症度に応じて期間や程度が定められます。運動療法ではウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの、いわゆる有酸素運動が高血圧に好ましい運動とされています。運動中には交感神経の働きで一時的に血圧が上がりますが、運動を継続することで血圧を下げるプロスタグランジンやタウリンが増え、逆に血圧を上げるカテコールアミンなどが減ることが報告されています。食事療法も運動療法も医師と相談してから始めてください。
(本文監修:東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科教授 藤田敏郎先生)
現代社会において、ストレスのない生活というものは考えられません。過剰なストレス(特に精神的ストレス)や急激なストレスが加えられたとき、交感神経が過度に刺激され、血圧が驚くほど上がっていることがあります。それをきっかけに脳卒中や心臓病などの発作が起こることもあります。急激なストレスでなくても、ストレスが慢性的に長く続くことは、それだけ交感神経の高ぶった状態が続くことですから、やはり高血圧の方にとってはよいことではありません。運動、趣味など、自分なりのストレス解消法を身につけ、ストレスをため込まないようにすることが大切です。ストレス解消をアルコールや過食に求めることは避けたいものです。
(本文監修:東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科教授 藤田敏郎先生)
*上記高血圧治療ガイドライン2009に掲載された降圧剤以外にも近年、選択的アルドステロンブロッカーや直接的レニン阻害剤(DRI)なども有効例もあります。
食事療法や運動療法を続けても効果が不十分な場合や、なるべく早く血圧を下げる必要がある場合は降圧薬による治療を行います。最近の降圧薬は一般に副作用が少ないといわれています。降圧薬の副作用は薬によって異なりますが、頭痛、顔面潮紅・ほてり、倦怠感・脱力感、動悸、性機能低下、空咳などの症状が現われたら、すぐに医師に相談してください。降圧薬は高血圧を根本的に治療する薬ではなく、血圧のコントロールを通じて動脈硬化や脳卒中、心臓病などを予防するための薬です。ですから、血圧が下がってきたからといって勝手に服用をやめたり、服用量を減らしたりしてはいけません。もちろん、薬を飲んでいるからといって食事療法や運動療法を疎かにしてはいけません。
(本文監修:東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科教授 藤田敏郎先生)
血液中のコレステロール、中性脂肪など脂質の数値で診断されるのが脂質異常症(高脂血症)です。脂肪分の摂り過ぎなどにより血液中の脂質が増えた状態が続くと、血管そのものに影響を及ぼし、やがて動脈硬化が起こりやすくなります。食生活の欧米化が進むと共に、若年層にも増えている注意すべき病気です。
動脈硬化が進むと冠動脈疾患や脳血管障害が起こりやすくなります。動脈硬化の予防には、高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常症などを総合的に管理する必要があります。一方、日本の疫学研究や臨床試験の結果から、高コレステロール血症および高LDLコレステロール(LDL-C)血症が冠動脈疾患や脳梗塞と密接に関連していることや、高LDL-C血症を治療すれば、これらの病気を予防できることが明らかになってきました。
これらのエビデンスをもとに従来のガイドラインを改訂し、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2007年版」(新ガイドライン)がまとめられました。ここでは、脂質異常症の診断基準や治療方針など、新ガイドラインのポイントを概説します。
新ガイドラインでは、動脈硬化性疾患の予防や診断の基準が、これまでの総コレステロール、LDL-C値併記からLDL-C値に一本化されました(表1)。これまで動脈硬化性疾患のリスクを表すコレステロール値として、HDLコレステロール(HDL-C)やLDL-Cなどを含む血清総コレステロール(TC)値が用いられてきました。しかし、TC値が診断基準値以下であってもLDL-C値が高かったり、HDL-C値が高いためにTC値が高い場合に、動脈硬化性疾患のリスクが正確に判断できないことが考えられるため、TC値は新ガイドラインの診断基準から除外されました。
また、診断基準の名称が、従来の「高脂血症の診断基準」から「脂質異常症の診断基準」になりました。「高脂血症」という呼称は、重要な脂質異常である低HDL-C血症を含む表現として適切ではなく、諸外国での記載と統一するためです。
なお、この診断基準は脂質異常症の薬物療法の開始基準を示すものではなく、動脈硬化性疾患のリスクの高い方を見つけ出すためのものです。そのため、「薬物療法の適応に関しては、他の危険因子も勘案して決定されるべきである」と明記されています。
脂質異常症と診断された患者さんには、動脈硬化性疾患が起こる危険度による分類にもとづいた管理目標が設定されています(表2)。
まず、冠動脈疾患を発症していない場合(一次予防)と冠動脈疾患を発症したことがある場合(二次予防)に分類されます。
一次予防では、LDL-C値以外に冠動脈疾患が起きる危険要因(加齢、糖尿病、高血圧、喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDL-C血症)の数により、患者さんを3つのリスク群に分け、リスク別にLDL-C値をはじめとする脂質管理目標値を設定しています。
二次予防においては、一次予防に比べるとより低い目標値、LDL-C値100mg/dL未満を目標にすることが奨められています。
脂質異常症の治療の目的は、脂質の数値を改善して動脈硬化性疾患の発症を予防することです。治療方針では、一次予防、二次予防ともに食生活や運動などの生活習慣を改善することが重視されています。
一次予防では、生活習慣の改善を評価した後、患者さんの動脈硬化性疾患のリスクに応じて薬物治療が考慮されます。二次予防では生活習慣の改善とともに薬物療法を検討します(図1)。
新ガイドラインは、65歳以上75歳未満までの高齢者に対しても適用が可能で、女性の高LDL-C血症に対する管理方法についても解説しています。
また新ガイドラインでは、2005年に診断基準が発表された「メタボリックシンドローム」が、LDL-C値とは独立した冠動脈疾患の重要で危険な病態として取り扱われています。
(本文監修:帝京大学医学部内科学教授 寺本 民生先生)
(血管イラスト監修:大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授 森下 竜一先生)
脂質異常症にならないためには、まずなにより生活習慣の改善が必要です。食生活の乱れや運動不足はもちろん、睡眠不足、酒、喫煙、ストレスなど脂質異常症を誘引する危険因子を生活から遠ざけ、積極的に活動し、趣味の時間を持つなど、イキイキと過ごすことが大切です。脂質異常症になったら食事療法と運動療法が治療の基本となります。それでも効果がない場合は、薬による治療を行います。その場合でも、食事・運動療法を継続することがポイントです。脂質異常症治療の最終目的はコレステロールを下げ動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などを予防することです。
喫煙とがんの関係はよく知られていますが、脂質異常症にも大きな影響を及ぼします。喫煙によってLDL(悪玉)コレステロールが変性し、HDL(善玉)コレステロールが減ってしまいます。また、LDLの酸化・変性を促し、動脈硬化の直接の原因ともなります。ストレスと脂質異常症の関係も見逃せません。強いストレスや長いストレスはホルモンの分泌を狂わせ、血液中にコレステロールや中性脂肪を増やしてしまいます。ストレスからヤケ酒やヤケ食いに走れば脂質異常症はますます悪化します。適度なアルコール(個人差はありますが日本酒なら1合、ビール中ビンなら1本、ワインならグラス2杯程度/1日)はストレス解消にも役立ちますが、飲み過ぎはいけません。肝臓での中性脂肪の合成が進んで、血液中に中性脂肪が増えてしまいます。
(本文監修:帝京大学医学部内科学教授 寺本 民生先生)
脂質異常症の治療では、まず食事療法が基本となります。脂質異常症にならないために、摂取エネルギーの総量を制限したり、脂質や糖質などを取り過ぎないようにすることが中心となります。脂質異常症といっても、コレステロールが高いタイプ、中性脂肪が高いタイプ、どちらも高いタイプでは当然、食事療法の内容が違ってくるので、医師や栄養士の指導に従うことが大切です。
(本文監修:帝京大学医学部内科学教授 寺本 民生先生)
食事療法と並んで脂質異常症の治療の基本となるのが運動療法です。運動療法を同時に行うことで食事療法も相乗的な効果を発揮します。運動すると中性脂肪が減り、HDL(善玉)コレステロールが増えます。また、運動にはストレス解消になる、血圧を下げる、血糖値を下げるなどのメリットがあり、脂質異常症以外の生活習慣病の予防にもつながります。運動を大げさに考えて、やる時間がないという人がいますが、生活の中で小まめに体を動かすだけでもいいのです。駅やバス停はひとつ手前で降りて歩く、エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を使う、掃除や庭仕事……などの家事も運動の一つです。
脂質異常症を改善する運動として最適なのは、有酸素運動といわれるタイプの運動です。このタイプの運動は持続的に酸素を取り入れながら行うもので、たとえばウォーキングなどの有酸素運動を15分以上続けることで、体内に蓄積された脂質が消費されはじめます。逆にいえば、15分以内だと運動療法としての効果はあまりありません。運動量は年齢や症状によって個人差がありますが、できれば1日30分を目標にし、毎日コツコツと続けたいものです。毎日が理想ですが、体調、天候の悪い時は無理をせず、1週間に少なくとも3日の運動を目標にし、実行することが大切です。過激な運動で心臓、足腰に負担をかけ過ぎるのは好ましくありません。運動療法の効果が現われはじめるのは最低でも3ヵ月はかかります。どのような運動をどの程度行うかは、必ず医師に相談してからはじめましょう。
(本文監修:帝京大学医学部内科学教授 寺本 民生先生)
食事療法や運動療法を続けてもコレステロールや中性脂肪の値が下がらないときには薬を使わざるを得ません。脂質異常症の薬は、おもにコレステロール値を下げる薬と、中性脂肪値を下げる薬に大別できます。その機能は、コレステロールや中性脂肪の合成阻害や、体内での吸収抑制です。いずれも長期投与される薬なので、個々の症状にあった、有効性、安全性の確立された薬剤を服用しましょう。
脂質異常症治療は長い時間を要します。検査値を見て勝手に薬の量を変えたり、服用を止めたりしてはいけません。医師の指示通りに服用することが大切です。短期的に検査値が正常に近づいたとしても、それは薬の効果によるもので、薬を止めれば元に戻るケースがほとんどです。薬物療法を始めたからといって、食事療法や運動療法を絶対やめてはいけません。その2つをきちんと続けることで、薬の効果もより期待できるのです。なお、副作用の症状は薬の種類や個人の体質によって異なります。おかしいと感じたらすぐに服用を中止し医師に相談してください。また、薬はグレープフルーツジュースに含まれるフラボノイドや、他の薬との併用によっては薬物相互作用が起こる場合もあります。薬は水で飲むこと、別の薬を処方されている場合は医師に相談することが大切です。
(本文監修:帝京大学医学部内科学教授 寺本 民生先生)
糖尿病とは、尿に糖が出る病気ではなく、血液中のブドウ糖の量と、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンの作用のバランスに問題が生じ、結果的に血糖値が高くなるのが「糖尿病」です。血管や神経に障害を及ぼし、さまざまな合併症を引き起こすたいへん危険な病気です。
通常、私たちの血液中には70~110mg/dL程度のブドウ糖が存在しています。これを血糖といいますが、血糖値がほぼ一定に保たれているのはホルモンの調節作用によります。空腹時には血糖値は下がってきますが、このときグルカゴン、アドレナリン、コルチゾールなどのホルモンの分泌が盛んになって、血糖値を上げる方向に働きます。また、食事の後などは血糖値が上がってきますが、このときインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を下げるように働きます。インスリンは膵臓のランゲルハンス島という細胞から分泌され、ブドウ糖を肝臓、筋肉、脂肪組織などに取り込ませることで血糖値を下げる役割をします。ところが、なんらかの原因でインスリンの分泌が遅れたり、分泌機能そのものが衰えたり、分泌されたとしても作用する力が低下すると高血糖状態になります。高血糖状態が慢性化し、持続することによってさまざまな合併症を引き起こすのが糖尿病です。
糖尿病は、インスリンがほとんど分泌されない1型糖尿病、インスリンが分泌されるタイミングや分泌量、さらにインスリンの作用が低下している2型糖尿病に大別されます。健康な方の血糖値がほぼ一定に保たれているということは、ある一定濃度のインスリンが常に分泌されている(基礎分泌)ということです。食後に血糖値は上昇しますが、それにつれてインスリンも追加分泌され、血糖値が正常な範囲以上に上がらないようになっています。ところが、インスリンの分泌されるタイミングが遅れたり、分泌量が少なかったり、インスリン抵抗性といってインスリンが分泌されているのに作用が不十分だったりすると、血糖値が正常範囲に保てなくなります。これが2型糖尿病です。日本人の糖尿病の95%以上は2型糖尿病ですが、その原因には、もともとの遺伝的素因に加え、過食、運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣が大きく関わっているといわれています。なかでも過食や肥満の影響は大きく、肥満によって中性脂肪が過多になると脂肪細胞のインスリン受容体が減ってインスリンの働きが悪くなったり、脂肪細胞腫瘍壊死因子や遊離脂肪酸などが分泌されてインスリンの作用を妨げるといわれています。これがインスリン抵抗性で、膵臓は作用不足を補うためにとさらにインスリンを分泌しようとするのですが、そのうち疲弊して機能が低下し、血糖値が高い状態のままとなります。
(本文監修:順天堂大学医学部内科学教授 河盛 隆造先生)
(血管イラスト監修:大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授 森下 竜一先生)
糖の正常な流れをみると、食事によって体内に摂取された糖質は小腸で分解されてブドウ糖となり、吸収されます。ブドウ糖は私たちの活動のためのエネルギー源として利用されますが、すぐに利用されるものを除いては血液中に溶け込んで(血糖となって)、肝臓や筋肉や脂肪組織に運ばれ、そこで貯蔵されます。そして、ブドウ糖が不足したときに再び取り出されてエネルギー源として利用されます。このように糖質がエネルギーになるプロセスを糖代謝といいますが、その鍵を握っているのが膵臓から分泌されるインスリンです。インスリンは細胞側にあるインスリン受容体と結びつくことで、ブドウ糖を肝臓や筋肉や脂肪組織に取り込ませるように働くのです。糖尿病とは、この糖代謝のプロセスやシステムが正常に作動しないために起こってくる病気といえます。
糖尿病の合併症は、ほとんどが血管に障害が起こり、慢性的で自覚症状がなかなか現れないものが多いのですが、糖尿病性ケトアシドーシスのような急性合併症もあります。インスリンが高度に不足したり、かぜや感染症などによってインスリンの働きが低下して高血糖状態が高じると、働かない糖の代用として脂肪が燃えてエネルギー源となります。脂肪の燃えかす(ケトン体)は血液を酸性に変え、その結果、腹痛、吐き気、脱水症状などが起こり、やがて脳の酸欠状態を経て昏睡に陥ります。また、高齢者は高血糖による脱水症状から非ケトン性高浸透圧性昏睡に至ることがあります。どちらも放置すれば命にかかわる油断できない合併症です。
このほか、動脈硬化、細小血管障害、神経障害、免疫力低下による感染症、その他、さまざまな要因から多くの合併症が起こり得るのが糖尿病の特長です。
(本文監修:順天堂大学医学部内科学教授 河盛 隆造先生)
糖尿病は、遺伝的素因に加え、生活習慣によって誘発される病気です。過食、高脂肪・高カロリーに偏った食事、運動不足、ストレス、喫煙、アルコールの取り過ぎなどが糖尿病の危険因子といえます。生活習慣を見直し、これらの危険因子を取り除くことが糖尿病予防の第一歩です。糖尿病はほとんど自覚症状がないままに進行するやっかいな病気ですが、早期発見・早期治療が合併症を防ぐためにも重要になります。上図のような症状が出たら血糖値が上がっている可能性があるので、すぐに診療所で検査を受ける必要があります。
糖尿病の治療の目的は血糖値を良好な状態にコントロールすることで、3大合併症(神経障害、網膜症、腎症)や動脈硬化などの合併症が起こらないようにすることです。逆にいえば、糖尿病そのものの完治は困難といえます。しかし、きちんと治療を続けていれば、「生活の質QOL=(Quality of life)」を落とすことなく社会生活や家庭生活を送ることができます。糖尿病の治療は脂質異常症や高血圧と同じように、食事療法、運動療法、薬物療法が中心となり、生活習慣の是正や自己管理が重要な鍵を握っています。日常のケアとしては、予防と同じく生活習慣の是正に加え、神経障害、細菌感染による足の壊疽を予防するために足を清潔にし、傷ややけど、水虫などをチェックする、歯周病になりやすいので歯をよく磨く、かぜなども場合によっては重症化のおそれがあるので注意が必要です。食事療法などでは家族や周囲の人間の協力も必要になってきますし、子どもやお年寄りの糖尿病患者には、精神面を含めてのサポートが大切です。
(本文監修:順天堂大学医学部内科学教授 河盛 隆造先生)
糖尿病治療の基本は、あくまで食事療法です。運動療法や薬物療法を行う場合でも、食事療法がきちんと守られていることが前提です。特に日本人に多い2型糖尿病はインスリンの作用不足が原因で血糖値が高くなる病気ですから、食事に気を付けてインスリンが効きやすい体に戻すことが先決です。血糖値をコントロールすることで、糖尿病の進行を食い止めることができます。糖尿病の食事療法といっても特別なものがあるわけではなく、栄養バランスを考えて、適正なエネルギー量を摂取するということにつきます。まずは不規則な食事回数や時間、カロリー・糖分・塩分の多い間食や夜食、早食いやまとめ食いなどの食習慣を改めることから始めたいものです。どんな食品を、どれくらい食べたら良いかという実際の食事療法にあたっては、日本糖尿病学会編「糖尿病食事療法のための食品交換表」が参考になります。医師や栄養士の食事指導も、これを利用して行われます。
身体活動量等に合わせた食事をする必要があります(食事療法)。食べてはいけないものはありませんが、自分にあった分量の食事で、必要とするすべての栄養素をとるように工夫します。バランスのとれた食事ですので、家族と一緒に食べられます。
1日に食べる量は、お医者さんから指示を受けますが、目安としては
総エネルギー量 = 標準体重 × 仕事別消費カロリー (標準体重1kgあたり)
エネルギー量の計算は、80kcalを1単位として計算する方法が簡単で、一般的です。
運動は2型糖尿病の最大の原因といわれる肥満の解消に役立つだけでなく、血糖値のコントロールにも極めて有効です。糖尿病の運動療法に向いているのはウォーキングや水泳などの有酸素運動です。これにストレッチや筋力トレーニングなどを組み合わせて行います。血糖値が上がりやすい食後1時間から1時間半後に行うのが理想的です。できれば毎日続けたいものですが、少なくても週3回以上が望まれます。ただし合併症のある方やインスリン治療中の方は必ず医師に相談してから行ってください。
1.経口糖尿病用薬
2型糖尿病では食事療法や運動療法を行っても十分な血糖コントロールができない場合、血糖値を下げるために経口糖尿病用薬による薬物治療が行われます。現在、使用されている糖尿病用薬としては、上表の6タイプがあります。
近年、DPP-4阻害薬を代表とする待望の2型糖尿病治療薬であるインクレチン関連薬が処方できるようになり、低血糖、体重増加など従来の糖尿病治療薬で問題になっていたリスクを克服し、より質の高い治療が実現されつつあります。インクレチンは、摂食量に応じて、適切な量のインスリン分泌を促進する消化管ホルモンであり、GLP-1とGIPがある。低血糖をきたしにくい、体重が増えにくい、膵臓β細胞の機能・量が保持・保護される特性から、2型糖尿病治療の変革に大きく寄与することが期待されています。
また、1型糖尿病や、2型糖尿病で糖尿病用薬の効果が不十分な人には、インスリン製剤を注射する治療が行われます。糖尿病用薬を服用する場合には、血糖値が必要以上に下がってしまう低血糖に注意が必要です。低血糖にならないようにするためには、薬の服用量を守り、食事時間や食事量を規則正しくして、食前に激しい運動は控えるようにします。
2.インスリン療法
1型糖尿病や、2型糖尿病で食事療法、運動療法、経口糖尿病用薬で効果が現われない人には、インスリンを注射によって補うインスリン療法が実行されます。インスリン製剤は皮下注射後の効き方や持続時間によって、おもに超速効型、速効型、混合製剤、中間型、持続型の5種類に分かれます。超持続型などさらに新しいインスリン製剤の開発も進んでいます。
原則的に注射は患者本人が行います。インスリン注射器には、いわゆる注射器と同様インスリン製剤を必要量自分で吸引して注射するシリンジ型とカートリッジ式のペン型がありますが、最近は薬の分量を間違えにくく、使い方や持ち運びに便利なペン型が主流です。インスリン注射は、上腕部、腹壁、大腿部などに皮下注射するのが基本です。インスリン注射を開始したら、日ごろから自分で尿糖の有無や血糖値を調べて、しっかり自己管理を行う必要があります。市販の尿糖検査用試験紙や血糖測定器で血糖コントロールの目安にします。
(本文監修:順天堂大学医学部内科学教授 河盛 隆造先生)